2004.12.02 口腔清掃

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◆ 「クスクス………本当に、面白いチカラだわ。 願望(のぞみ)を抜き取って、壊してしまうなんて」 一筋の光すら射し込まない、狭くて小さい、しかし何処までも続いている、暗闇の部屋。 その部屋の中央に置かれた、古めかしい等身大の鏡。 少女はそこで、鏡にくっつきそうなくらい、その美貌を近付けながら。 食い入るようにその“中身”を見つめ、愉快げに笑った。 「あの喧嘩好きな“紅い蝶”が大人しくしていてくれれば、幸いなのだけど……そうもいかないみたいね」 身に纏う黒衣は、所々が焼け焦げ、ぼろぼろの衣装と化していた。 美しい手足に刻まれた傷跡からも、彼女が、何者かと凄まじい戦闘を繰り広げてきたことが窺える。 「今回は痛み分け。 わたしも“紅い蝶”も、数日の間は動けないでしょうし」 悩ましげに眉根を寄せ、“魂滅者”たる少女は苦笑する。 己と同等の存在である少女は、恐らく、半刻前の戦闘で、大幅にチカラを消費したと見て間違いないだろう。 「クスクスクス…。あのコに狙われないよう、せいぜい注意することね。 貴女の力が弱まってると感づけば、文字通り“飛んで”来るでしょうから……ね」 【口腔清掃 了】  
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