プレ・ラブストーリー 第1章

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「社長……まさか、なくされたんですか?」 「……!あ、上着のポケットだ。さっきクローゼットに入れたんだ」 再び高鳴る鼓動。七星は深呼吸して冷静に考えた。 (すばっちは左ききだから、おそらく、左の扉を開くはずだ。だから逆側に隠れてりゃ……) 物音を立てないようにそろそろと移動する。 「金森君、悪いけど君、取ってくれる。黒いスーツなんだけど」 「かしこまりました、社長」 コツコツというハイヒールの音が近付く。 (え……え!?ちょ、ちょっと……すばっち!) 慌てて取っ手を引っ張ろうとしたが、内側に取っ手なんてあるはずもなく…… (どうしよ……どうすりゃいいんだよ……神様~っ!!) ガチャ。 祈り虚しく、開かれた扉の前には金森礼子が目を剥いて立っていた。 七星はまばたきも忘れて固まってしまった。 (バカ社長!!知らねーぞ俺はっ!)
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