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「社長……まさか、なくされたんですか?」
「……!あ、上着のポケットだ。さっきクローゼットに入れたんだ」
再び高鳴る鼓動。七星は深呼吸して冷静に考えた。
(すばっちは左ききだから、おそらく、左の扉を開くはずだ。だから逆側に隠れてりゃ……)
物音を立てないようにそろそろと移動する。
「金森君、悪いけど君、取ってくれる。黒いスーツなんだけど」
「かしこまりました、社長」
コツコツというハイヒールの音が近付く。
(え……え!?ちょ、ちょっと……すばっち!)
慌てて取っ手を引っ張ろうとしたが、内側に取っ手なんてあるはずもなく……
(どうしよ……どうすりゃいいんだよ……神様~っ!!)
ガチャ。
祈り虚しく、開かれた扉の前には金森礼子が目を剥いて立っていた。
七星はまばたきも忘れて固まってしまった。
(バカ社長!!知らねーぞ俺はっ!)
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