プレ・ラブストーリー 第1章

4/29
前へ
/746ページ
次へ
「じゃさ、ななちゃん、野球拳でもするか?」 「やらないし、スポーツじゃないし……てゆーか発想がオヤジ」 昴の形の良い眉がピクッと反応するのを、七星は見逃さなかった。 「斎藤君」 「……はい」 「会議の資料、36階の社長室に運んでおいて」 急によそよそしくなった昴はそう言い残すと颯爽と立ち去った。 七星はホッと息をついた。この程度のお仕置きで済んで良かった。 直後、廊下の角から昴の声が飛んできた。 「あ、ちなみにエレベーター点検中で使えないから」 「へっ?」 「平気だよね、ななちゃん若いから」 「……~~!」 七星は思った。 (昔はあんな奴じゃなかったのに……) 思ってからハッとした。 (やべ……昔を回顧する時点でオヤジどころかジーさんだろ、俺!!) ◇◆◇◆ ダンボール箱に山盛りの会議の資料……。 「本気かよ……これ担いで36階まで階段でって……鬼もいいとこだろ」 昴の不敵な笑みが脳裏をよぎる。 (上等だ、やってやろーじゃん!)
/746ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2148人が本棚に入れています
本棚に追加