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這々の体で社長室に入るや否や、七星は叫んだ。
「ハァハァ……持って来たぜ、すばっち!」
昴は窓辺で葉巻をくゆらせていたが、ふーっと煙を吐き出すと、ニッコリと微笑んだ。
「ご苦労さん」
「ハァハァ……てか、すばっちも階段で上がって来たわけ?」
「ななちゃん、まだ息切れてる。意外と体力ないね」
「ハァハァ……元バスケ部キャプテンをなめんなよ!」
「そんな、昔取った杵柄……自慢にもなんないよ」
昴は葉巻をくわえたままスーツの上着を脱ぐと、ワイシャツの袖をまくり始めた。
(昔取った杵柄って……いちいち言い回し古いよな)
内心思うが、口には出さない。
「あ~あ、すばっち本当酒強いよな。どうやったらそんな強くなんの?」
「いいんだよ、ななちゃんはそのままで。いつも言ってるだろ、ななちゃんは俺が守るって」
言い切った後の昴の屈託ない笑顔にグッときてしまう。
が……、心とは裏腹に、七星は唇を尖らせた。
「保護者面すんなよ。1コしか変わんないのに」
「その1年の差が大きいんだってば」
「頭を撫でるな!ガキ扱いすんなよ、オッサン!」
いつの間にか側に寄って来ていた昴に頭を撫でられ、七星は喚く。
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