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昴はおもむろに灰皿を引き寄せると、そこに葉巻を押し付けた。
「ななちゃんて本当……挑発してくるよね。そんなにいじめられたい?」
「違っ……」
目をそらそうにも、昴の双眸には不思議な力がある。吸い込まれるような瞳に、捕らわれる。
「まだ息切れてるね」
「これは、怒りと興奮でだな……」
言い終わらないうちに昴の唇が、七星のそれを塞いだ。
フウッと息が吹き込まれる。微かに残る煙草の匂い。
「人口呼吸♪──で、興奮って何に?」
言い返そうとした唇をまた塞がれる。合わせた上下の歯をこじ開けるように舌が侵入してくる。
二日酔いの体に濃厚なキスはかなりの試練だ。クラクラする頭は回転が鈍り、わけがわからなくなる。
革張りのソファーに倒れ込み、七星は抗うこともできなかった。
「ななちゃん、大丈夫?」
息を切らす七星の背中に手のひらの感触。優しく背中を撫でる手。
(気持ち……いい…)
首筋に軽いキスを繰り返す昴。彼の柔らかい髪が顔にかかり、シャンプーだか香水の良い香りが鼻腔を刺激する。
七星の好きな香りだ。この匂いに包まれているとホッとする。心地よく微睡む七星だった……
が……。
ガリッ!
「痛っ!!」
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