―開幕ー

4/24
93人が本棚に入れています
本棚に追加
/347ページ
     真悟と呼ばれた電話越しの主はひょうひょうとした声で応え、それに習うように和真も冗談で応えた。     「あぁ、なかなかに眺めが良いぜ?」        そう言うとそこから見れる夜景を再び見つめる。      和真としては、ここでしばらく夜景を見ながらのんびりしていたいとこだ。      しかし連絡が来たとなれば、それはお預けである。     「はいはい、左様でございまして?」      どこか呆れた感じの声色を発する真悟。  和真が今どの様な心境でいるのかが、彼にも察することは容易かった。     「悪いね~和真ぁ、気分よく浸っているところをさ」 「いいんやぁ、別にぃ?」     互いにわざとらしく、言葉を一つ一つ強調して話す。    それもまた、彼らが親しい間柄であるが故のこと。   「それじゃ、そろそろ始めますか?警察に連絡しとくから早めに片付けてね~?」          真悟は簡潔に要件を伝えて、後はご自由にと言いたげな雰囲気であった。     「オッケー、任せろ!」      どこか自信ありげな声で和真は応えた。      そして通話を終わらせると携帯電話を仕舞い、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。       「さぁーってと・・・」      浮かべるや否や、軽い準備運動をする。    するとフェンスから離れて充分な距離をつくる。      そして助走をつけて勢いよく走りだした。     「・・・行くぜ?」      目の前の光景を睨み付ける。    誰に聞かせるわけでもないが、それはまさに様になる光景ではある。      コンクリートの地面を陥没させるほど、力強い跳躍でフェンスを飛び越えて、和真はビルから飛び降りた。        
/347ページ

最初のコメントを投稿しよう!