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真悟と呼ばれた電話越しの主はひょうひょうとした声で応え、それに習うように和真も冗談で応えた。
「あぁ、なかなかに眺めが良いぜ?」
そう言うとそこから見れる夜景を再び見つめる。
和真としては、ここでしばらく夜景を見ながらのんびりしていたいとこだ。
しかし連絡が来たとなれば、それはお預けである。
「はいはい、左様でございまして?」
どこか呆れた感じの声色を発する真悟。
和真が今どの様な心境でいるのかが、彼にも察することは容易かった。
「悪いね~和真ぁ、気分よく浸っているところをさ」
「いいんやぁ、別にぃ?」
互いにわざとらしく、言葉を一つ一つ強調して話す。
それもまた、彼らが親しい間柄であるが故のこと。
「それじゃ、そろそろ始めますか?警察に連絡しとくから早めに片付けてね~?」
真悟は簡潔に要件を伝えて、後はご自由にと言いたげな雰囲気であった。
「オッケー、任せろ!」
どこか自信ありげな声で和真は応えた。
そして通話を終わらせると携帯電話を仕舞い、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
「さぁーってと・・・」
浮かべるや否や、軽い準備運動をする。
するとフェンスから離れて充分な距離をつくる。
そして助走をつけて勢いよく走りだした。
「・・・行くぜ?」
目の前の光景を睨み付ける。
誰に聞かせるわけでもないが、それはまさに様になる光景ではある。
コンクリートの地面を陥没させるほど、力強い跳躍でフェンスを飛び越えて、和真はビルから飛び降りた。
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