Sequence09:ジャバウォックの鎮魂曲 -03-

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「で、どうなったんですか!?」  目を爛々と輝かせてツバキに詰め寄る琉生。恋愛の話に限っては、遠慮など無用なものなのだ。  人見知りしてあまり話をしなかったり、悠輔のことを思い出して暗くなったり、恋の話と聞いて詰め寄ったり、見ていて全く飽きない子だ、とツバキは小さく笑う。  ユリもそんな感じだったなぁ、と、密かに感傷に浸りながら。 「いや、どうもこうもねぇな。大学卒業してみんなまとめてA.U.Oに就職して。アタシは医療部門だったけど、あいつらは科学技術部門だろ。んで、すぐにあいつら二人でものすげード真剣に研究始めてさ」 「恋心は研究に負けたんですかっ!」 「まぁ、そういうこったな。水を差したくなくて、黙って見てるうちにあいつら仲違いして、レンは失踪しちまった」  ツバキは自嘲気味に笑ってみせる。  やはり、後悔している部分もあるのだろう。自分の気持ちを言い出せないまま、友人と喧嘩をしてそのまま姿を消すなんて、ものすごく後味が悪い。  あの時あぁしておけば良かった、と思うことなんて、ツバキも人間なのだからあるに決まっている。  琉生にも、そんな感情に心当たりがあるので、さすがに軽く流すことなんて出来なかった。  二人しかいない部屋を、僅かな沈黙が埋め尽くす。
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