535人が本棚に入れています
本棚に追加
/266ページ
薄暗い照明の下、キサラギは執務室で琉生から奪い取るようにして取り上げた写真を見つめていた。
感情的になりすぎたのは重々承知だ。でも、素直に謝ることが出来なかった。
未だにツバキの目をまっすぐ見つめて話をすることが出来ないこと、ミーティアのこと、琉生に対する態度のこと。
自分のみじめさを自覚して、込み上げてくる嫌悪感に思わず舌打ちをする。
無駄だと分かっていても、このままでは辛いだけだと知ってはいても未だに感情を拭い去ることの出来ない、自ら命を絶った写真の中の最愛の人。
他人に誤解されがちで不器用な自分のことを、誰よりも理解してくれていた。
もちろん自分も、彼女のことを一番理解しているつもりだったし、実際そうだったと思う。
極度の人見知りで、あまりうまく他人と話すことが出来なかった。
一見大人しめだったけど、いざ仲良くなってみると意外に話好きな普通の、むしろ明るめの女の子。
初めて会った時のユリはそんな印象だった―――
最初のコメントを投稿しよう!