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『は? 妹を連れてきた? なんでまた』
十八年前のことだった。
大学の講義もあらかた終わり、三人で論文を書くために大学の中庭のカフェで、如月、ツバキ、レンの三人は集まっていた。
論文を書くためと言っても、あらかた出来てしまっているので本当は特にすることもなかった。
『連れてきたっつーか、ユリが勝手に来たんだよ』
『どうしてまた来たんだい?』
そう発言したのはレンだった。
如月も顔は整っているほうだったけど、レンもまた違った魅力があった。例えるなら、如月は美術品のような計算された魅力、対してレンは、人の手が加えられず自然と生まれた芸術品のような、近いようで全く違う美しさだった。
当時ツバキは如月と婚約関係にあったが、お互い意識することもなく、ただの学友として接していた。
本当に互いに興味がなかったのもあるが、如月は科学研究室の長、次期“キサラギ”としての人生が決まっているので、学業に気を抜くことが出来なかったし、ツバキも医者を目指していたし、心の底でずっとレンを想っていた。
それは態度に出るものではないので、もちろんその事実を知っているものはいなかったし、レンがツバキをどう思っていたかなんて今となっては分かったことではない。
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