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『叶成に、ツラ貸せってよ』
『は?』
婚約者の身内のことにも関わらず、興味がない内容だったのでコーヒーをすすりながらプリントした資料に目を通していた如月は奇妙な声を上げた。
『なんで俺が会ったこともないお前の妹にタイマン迫られてるんだ?』
『そりゃあもちろん、姉想いな妹が婚約者のくせにアタシの美貌に見向きもしないお前に業を煮やしたんだろうよ』
ツバキはニヤニヤと笑いながら、手元のコーヒーにガムシロップを冗談抜きでドバドバと豪快な音を奏でるくらいに注ぎ、かき混ぜてもジャリジャリと素晴らしい音がするくらい砂糖を入れる。
それを見たレンが頬をひきつらせ、如月は自分が飲んでいるブラックさえも甘く感じた。
『それはまた随分姉想いなことだな。果たして俺は勝てるだろうか? 君に似てゴリラみたいな腕力してないだろうね』
『そうだろ? アタシもいい妹を持ったもんだよ。小鳥くらいの力しかないアタシに代わってお前を倒してくれんだから』
『ツバキ……ハチミツ、それ以上入れたらもうコーヒー溢れるよ……』
若干青ざめながら、腹の底から込み上げてくる何かを口元でギリギリ抑えながら、レンが制する。
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