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アリス・リバイバルは、左手首につけた腕時計をちらりと見てから、顔を上げた。
彼女の目から見た空は、抜けるような青空だった。
アリスは小さくため息をつき、後ろの建物の壁にもたれかかる。
今日はラッセル・ツヴァイと待ち合わせをしている。既に待ち合わせ時間を五分は過ぎているのに、詫びの連絡もないとはどういうことか。
アリスは憤慨した。ラッセルが来たら絶対に怒ってやろう。
そう思い、拳の用意をした時だった。
「アリス!」
待ちに待った声が、アリスを呼んだ。アリスは眉をぐっと吊り上げて、声のしたほうを振り向く。
「遅いっ!」
まずはどうやって怒ってやろうか、といろいろ考えていたのだが、初めに口を割って出てきたのは、やはりこの言葉だった。
「ごめんごめん、時間ギリギリに着くように家出ようとしたら、姉ちゃんが雨降るだろうから傘持ってけって……」
息を弾ませ、肩を上下させて謝るラッセルに、アリスの中の怒りはかき消された。
しかしそう簡単に許すわけにもいかない。
「時間ギリギリに出ようとするからでしょっ!」
ふん、と鼻を鳴らしてアリスはそっぽを向く。遅刻の原因が、自分も大好きなラッセルの姉、マリアとあれば、素直に怒ることが出来ない。
「ごもっともで!」
ラッセルは自分の額をパシンと叩くと、八重歯を覗かせて笑った。
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