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「とりあえず、どこいく? フェスタまではまだ二時間くらいあるけど」
「私ね、新しい髪止めが欲しいの! 選ぶの付き合ってね!」
先ほどの不機嫌はどこへやら、アリスは顔を輝かせるとラッセルの手を引いて歩きだした。
「えー? アリスこの前も同じようなこと言って結局買わなかったじゃん!」
ラッセルを眉をひそめ、嫌悪感を露わにした。しかしそこに悪意は感じられない。
「遅刻してきた人に拒否権はなし!」
アリスは言い放つと、お構い無しに足を進める。
「アリスが遅刻して来た時は“女の子は支度に時間がかかるから仕方ない”とか言ったくせに……」
ラッセルはアリスに聞こえているかどうかといった程の大きさで、唇をとがらせて呟いた。
「あーあー聞こえない!」
アリスは人差し指で耳栓をすると、ラッセルのぼやきを聞き流した。
二人の休日はいつもだいたいこのように始まる。
いつまでもこの関係が続くのだと錯覚してしまうような、ありふれた幸せの時間。
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