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「んー、どれがいいかな?」
ラッセルはアリスに倣って、腰をかがめて陳列棚を眺めた。
こうやって毎回付き合わされる退屈な買い物も、アリスのことを思えば嫌いになれなかった。
「ねー、そういえば」
アリスは次から次へと様々な商品を手に取り、眺め、また棚に戻すといった作業を繰り返しながら、ラッセルを見ることなくポツリと呟いた。
「んー?」
ラッセルは髪止めとアリスを交互に見つめ、やっぱり彼女を見ることなく言う。
「琉生、最近元気ないよね」
「ねー、どうしたんだろうね」
ラッセルはやっと一つ、銀色の髪止めを手に取って、アリスの頭に合わせながらアリスの話に相づちをうつ。
なんとなくイメージと違う気がして、ラッセルはそれを元の場所に戻した。
「……そういえば」
ラッセルは唐突に何かを思い出したように、別の髪止めを手に取りながら言った。
「琉生がよく話してた人いるじゃん。大学生のさー、愁慈と同じ名字の……」
「吾妻悠輔さん」
アリスは興味を示したように、やっと視線をラッセルに向けた。
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