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「そう、その人。姉ちゃんがその人と同期なんだけど、最近講義出てないんだって」
ラッセルは両手に色違いの髪止めを持ち、交互に見つめる。
「それと何か関係があるってこと?」
「さぁ」
ラッセルは首を横に振った。二人からしてみると、琉生は謎に包まれていて、悪い気はしないものの、どこか得体の知れないものがあった。
「なんか、琉生も複雑だね」
アリスが「琉生“も”」という言い回しをしたことに、ラッセルは気づくことが出来なかった。
「あ、これなんてどう?」
ラッセルが勧めたのは、花を象った金色のものだった。
アリスはそれを見て密かに眉をひそめた。
「気に入らない」
アリスがそっぽを向くと、ラッセルは目を丸くして首をひねった。
「なんで? 可愛いじゃん」
「その花の、花言葉が嫌いなの」
アリスの声が少し低くなる。ラッセルはそれ以上問い詰めることをせず、適当に返事をするとそれを棚に戻した。
その花の名はイキシア。花言葉は「秘めた恋」という。
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