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「どうぞこちらもお受け取りください」
女性店員が作り慣れた事務的な笑みを浮かべ、店のブランドマークの入った小さな手提げ袋を差し出す。
アリスは首をかしげながらも、それを受け取った。
「本日は当店の開店五周年記念となっておりまして、本日ご来店なさったお客様にお配りしております」
「あ、そうなんだー」
両手で持つ紙袋をまじまじと見つめながら、アリスは小走りでラッセルの隣りに並んだ。
「アリス、よそ見しながら歩くのやめなって」
「ね、中身なんだと思う?」
せっかくラッセルが注意を促したのにアリスにはそれが聞こえなかったのか、彼女はパッと顔を上げてにっこりと笑う。
「え、さぁ。そろそろいい時間だし、会場に行くまでのリニアバスの中で見ればいいじゃん」
自分の話を軽く流されたラッセルは苦笑いを浮かべる。しかし、それもアリスの笑顔を見れば跡形もなくかき消されてしまうのだった。
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