序章

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「いいか、叫ぶなよっ。 絶対だぞいいかっ?」 少女がこくこくと首を縦にふる。 「ふにゃ…… すーーーっ」 「って、言ってる側からこいつはっ!!」 もう一度タオルで少女の口をふさぐ。 少女はばたばたと暴れている。 誘拐されるとでも思ったのだろうか? 「いいかっ!! 俺は今日ここに引越して来た奴だ。 飯の部屋とお前の部屋を間違って開けたんだ。 お前に危害を加えるつもりはない。 だから、大声はだすなっ!」 少女は、さっきよりも大きく首を縦にふった。 「よしっ……」 そう言って離してやる。 少女も俺が言った事が理解出来た様で、落ち着きをとりもどした。 「いいか、まずは自己紹介だ。 俺の名前は大沢晴輝。 歳は十七で、今日こっちにやって来た。 お前は?」 「……晴輝さん?」 「あんっ!?」 「うわぁ、晴輝さんだ! 私の事覚えてますか? 結香ですよ! 柏木結香(かしらぎゆか)です。 昔よく一緒に遊んだじゃないですか?」 「柏木……結香……」 すーっと、昔の記憶がよみがえる。 いつも、転んでは泣いていた小さな女の子。 それが、結香……。 「お前……あの泣き虫、結香か!?」 「ふえぇ、泣き虫は余計ですよ。 晴輝さんだって結香がいないと、寂しいて言っていつも泣いてたじゃないですかぁっ」 「いや、絶対言ってないと思うけどな…… そういやお前何歳になったんだっけ?」 「忘れちゃたんですかぁ? 晴輝さんより一つ下だから今は十六ですよ」 「どうりで、今はこんなにも良い身体に……」 「そう言えば私、まだ着替えの途中だし…… って、どこ見てるんですかっ!?」
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