まなざしの向かう先

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救急車がまもなく到着し、救急隊員が担架をもって部屋の中に入ってきた。 脈拍を素早く計り、救急車へ乗せる。 「聡!お前も来い!」 奏平君が俺に声を掛けて、俺も救急車へ乗り込む。 死んだような顔をしている俺を見ていると、 先日テレビの特番とかでやっていた臨死体験っていうのを思い出した。 「・・・臨死体験ってこんな感じなのかな?」 周りは慌ただしくしているのに、ナゼか俺は冷静だった。 もうはっきりとは流華ちゃんや隊員の人の声も脳には入ってこない。 まるで、ビデオで録画されている映像を見ているような感覚だ。 リアル感がない現実。 必死な流華ちゃんの顔が涙でぐちゃぐちゃになっている。 それでも、可愛いなんて思うのは惚れた欲目だろうか。
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