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「わ、私も…す、す…。」
言いたいけど、言えない。
こんなにもどかしい。
「…ん、椿好きー…。」
侑弥くんはそう言って、また夢の世界に入ったのか、規則正しい寝息を繰り返していた。
ああ、だよね。
やっぱりなー、とか思って…。
悲しくなった。
侑弥くんを見ると、これまた私の心境と相反して安らかな寝顔だった。
「…はあ…。」
大きな溜め息を深く吐き、抱き締められている状態から逃れようとした。
ホントは、抱き締められたままでいたいけど、駄目だよね…って思ったから。
背中に回っていた侑弥くんの腕の力は、風邪を引いているせいか、寝ているせいか、意外と弱くて…簡単に抜け出せた。
それがまた…一層悲しくなる。
身を起こし、侑弥くんに掛け布団をかけると、また椅子に座り直した。
「…馬鹿やろう。」
抱き締められた時にドキッとして、顔が赤くなって…『好き』の言葉を聞いた。
でも、それは椿に向けてる言葉で…―。
期待しちゃった気持ちを返して欲しくて、悪態を吐いてしまった。
「…やっぱ私、椿になりたいよ。私のままでいいって言ってくれたけど、やっぱり…椿になりたいよ。」
侑弥くんがどれだけ椿を好きなのか、椿になって感じたい。
知りたい。
なんで、椿は侑弥くんの気持ちを分かってくれないのだろう?
一層、侑弥くんが椿に気持ちを伝えればいいのに…。
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