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「…椿が困るだろ。あまり困った顔、させたくないんだ。」
「…っ！」
侑弥くんのそういう優しい思いは、私には分からない。
困った顔をさせたくない…と言った侑弥くんの表情は、緊迫したものでもなく、とても穏やかなものだった。
その表情が…どれだけ私に向いて欲しかったか…。
駄目だ。侑弥くんにこんな思いさせたくない。
近くに居るのに、好きな人が遠くに居るように感じさせたくない。
嫌だよ。
「…そんなの、駄目だよ。椿を理由にして逃げちゃ駄目だよ。」
「……………。」
また自分の思ったことを言ってしまう。
侑弥くんは私の言葉に目を見開いたけど、押し黙った。
それを良いことに、言いたい言葉を続けた。
「逃げてたら、何も始まらないよ。自分の気持ちを伝えられないで後悔するのは、すごく苦しいと思う…。
だから…っ！だから、自分の気持ちを素直に…椿に伝えて…下さい。」
言い終わった後、何言ってるんだろ…と思ったけど、間違ったことは言った気がしない。
話してる最中は緊張して、顔に熱が帯びたのを感じたけど、自分の心の中がスゥッとした。
自分の言ったことを頭の中で反復させてみる。
あれ…？
『理由にして逃げてる。』って…。
思いっきり、私のことだ…。
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