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親父は母を語ろうとはしない。
だからどんな人で、
どんな思い出があって、
そしてどんな風に別れたのかさえ、
あたしは知らない。
たった一つだけ、
親父が酔った時に漏らした一言。
『お前の名前を付けたのは母ちゃんだ』
母は、何を思って『息吹』と付けたのだろう。
手に力が入り、持っていた紙に少し皺が寄る。
親父はきっとあたしの野望を知らない。
母にあたしを見つけてもらうために芸能界に入る事。
「知ったら許してもらえなそうだしな…ι」
親父が出ていった玄関から視線を紙に戻す。
「来週か、よし気合い入れるぞーッ♪」
それからの一週間、あたしは出来るだけ肌に気を付けたり食事に気を付けたりして過ごした。
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