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その日は雨だった。
昨日の夜から降り続いている。
ただ、目一杯ホースを振り回した様な雨でなかった。
いつもようにパラパラしとしと…
この街はいつもそうであった。
水溜まりを作ることもなく、川を造ることもなく、
ただ露に滴るように辺りを水に塗らしている。
もう何分もその中に立っているのは、朱色の傘を持った高校生で、彼は不思議そうに暗い曇を見上げた。
「…。」
彼は白い息を吐いて、
左肩のスリングを掛け直す。
右手の傘を弱くたたく雨音は非常に弱かったが、
彼の気分と気温を下げるには持って来いだった。
今日に限って彼は委員会の残業に付き合わされてしまった。
まぁ、先輩のいつもの気紛れだが…。
それに付き合う身にもなって欲しい物だと彼は溜息をついた。
その時、バス停の前立ち尽くす彼に、
雨音とは違うアスファルトを叩く音が聞こえる。
゛それ゛にしては速いテンポだ。
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