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「……!……!」
荒めの息を左隣りに感じ、彼は流し目を送った。
この雨に傘も差さず、
前髪を深く垂らした彼女は右手の人差し指でバス停の時刻表を追う。
時にはクルリと手首を返し、時間を確認しては、
また時刻表をなぞっていた。肩が上下して、いかにも息が荒い。
しかし、思った様な時間にバスがなかった様で、彼女は肩を落とした。
彼は彼女の行動をずっと追っていたので、彼には流れる様に彼女の考えが見える。
一瞬、彼女がこちらを見た様な気がした。
「…なぁ、入るか?
塗れてるけど、少しはましだろ?」
彼女は低い声聞いてびくついたが、彼は彼女の目がよく見えない。
前髪がかなり深く、
彼女ですらちゃんと見えているかどうか。
ただ、直ぐに俯いたから、余りじくりと見られなかった。
返事をまだもらってない彼は、肩に掛けた通学バッグを傘と持ち替え、彼女に傘を寄せる。
正確には、彼自体が内気な彼女にぴったりよった。
「…!」
彼女はまたビクッと肩をあげて、ローファーをコツと鳴した。
それでも彼はまた一歩彼女に詰め、肩が当たる。
もう彼女は抵抗しなかった。
ただ、彼女の細い肩は緊張したままで、
゛寒い所為゛か、耳まで赤い。
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