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複数の人間の足音と床板が軋む音だけが響く、静まり返った廃校舎の中。
俺達は西澤の持つ蝋燭の火を囲むようにしながら歩く。
部長の顔は相変わらず青く小刻みに歯がカチカチ鳴っている。しかも情けないことに庄司の背後で両肩に掴まっている(そしてかなり迷惑そうな目で睨まれている)。なんたって部長は怖いもの好きな怖がりという面倒臭い男なのだ。
蝋燭の火は壊れた窓の隙間から吹き込む風に不安定に揺れていたが、奇跡的に消えることなく、そのまま目的の花子さんが出るというトイレに辿り着くことができた。
「いよいよですね!胸が高鳴ってきちゃいましたよ僕!」
庄司が女子トイレの中に入るなり言った。このタイミングでその台詞を聞くと女子トイレ大好きみたいだ。
全員が中に足を踏み入れた途端、それを合図にするように不意に蝋燭の火が消えた。
更に背後でガンッと乱暴に引き戸が閉まる不吉な音がした。その時「ギャア!」と悲鳴が聞こえたが、察するに中に入り切ってなかった部長の身体の一部が挟まった音だろう。
それにしても今の扉が閉まったのは……ポルターガイストって奴だろうか?
「ああ~!!」
その時、俺の背後で庄司が絶望的な悲鳴を上げた。そこに何故か瞬時に反応する西澤。
「庄司クン、手遅れですか!?せっかく無事にここ(トイレ)まで辿り着いたのに……人としての尊厳を失うくらいならいっそのこと草むらとかで人としての恥を捨てた方が良かったですね!!」
……西澤は何を勘違いしてんだか。
ていうかその年で平然とランドセル背負ってる奴に恥とか言われたくない。
「どうした、庄司?」
代わりに俺は庄司に聞く。すると庄司は急に嗚咽し始めた。
「……どうした、マジで?」
「グスッ……ヒック……で……よ」
「あ?よく聞こえねーよ」
俺は庄司がいると思われる位置に近づき、傍らに屈んだ。
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