花子さん

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 次の瞬間、吐き捨てるように庄司は叫んだ。 「出てくんの早えよ!!」  そして力無く、というよりやる気なく床に座り込んだ。  そしてブレザーのサイドポケット、内側、袖口あらゆる所から怪しい道具や物体をボトボトと落とした。 「……。庄司君、君の至る所から滴り落ちてきたそれはなんなんだい?」 「花子さんはそう簡単に出てこないだろうと予想して儀式に使う道具を持ってきたんですよ。でももう要りません。意味ないし、一弥さんにあげますよ。僕もうやる気ありませんから」  俺は庄司の周りに散らばる怪しい物達の中から手探りで毛の生えたようなボールが幾つも繋がった人型の人形(?)を拾い上げた。  確実にいらない、うん。いやでも武器として毛をフサフサ――いや、やっぱ無理があるな。 「……ん?待てよ……」  庄司は『花子さんを呼び出すために』持ってきた儀式の道具をいらないと言った。  それは何故か。  答えは一つしかない。 ――もう既に『来ている』からだ。  しかし霊感の全く無い俺には暗闇以外何も見えないし、何も感じない。感じるのといえば隣で西澤が異様にソワソワしてることぐらいだ。  全く怪しいことこの上無い。 「おい、西ざ――」 《フフッ》 「……フフッって何だよ」 「え?私何も言ってませんけど~」 《クスクス……》 「嘘つけ、今笑ったろ」 「あれ、本当だ~。おかしいですね、腹話術かな?」  無意識に腹話術を使う奴がいたら見てみたい。 《おにいちゃん、おねえちゃん。遊ぼうよ……》 「誰がお兄ちゃんだ。縁起でもないこと言うな!」 「伊万里先輩こそ今私のことお姉ちゃんって言いました?お姉さん確か別にいましたよね?まさかシスコ……」  パン!と俺は思い切り西澤の頭をはたいた。 《……気づいてよ……何で私に気づかないの、なんでみんな、ひどイ、ひドいよ!!》  突然声がヒステリックになったその瞬間、視界が暗闇から真っ赤な画面に一変した。  あっ……この声西澤じゃねえ。  我ながら鈍感にも程があるな。
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