妖怪旅館 壱

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 俺は現在、朝早くだというのに(しかも土曜日なのに)バスに揺られている。 「あああ~っ!!」  朝眠れなかった分、せめてバスの中で睡眠をとっておこうと腕を組み目を閉じた直後、隣の西澤がけたたましい叫び声を上げた。  ちなみに俺が今座っているのは後部座席の隅で、左隣に西澤、その横に庄司、そして窓に張り付いている変態部長である。 「頼むからバスの中ぐらい静かに寝かせろ。どうしたんだよ西澤」  あまりに近距離で響いたためキーンと耳鳴りのする左耳を手で押さえながら俺は言った。すると西澤は残念そうな表情をしながら俺の方を振り返った。 「あの~、私、この前花子さんに会いに行った時、ランドセルプレゼントするのすっかり忘れてそのまま家に持ち帰っちゃったんです~!」  ……『花子さん』。  その単語を聞いた瞬間、一斉に動きを止める古研部員達。……当然俺もだ。  そう、部長が取り憑かれたために起きた最後の惨劇を思い出したのである。  クソ、何で休日にこんな気まずい思いしなきゃいけねえんだよ。  事のきっかけは、やっぱり西澤だった。
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