妖怪旅館 壱

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 遡って昨日の部室。  花子さん事件から既に一週間が経過していたが、未だに部室の空気は重かった。  何だかんだで一番気まずい俺は平静を装い漫画雑誌を読んでいた。何か読みにくいと思ってたけど、今思い返すと本の向き逆になってたのか。  西澤は得意のスピード立ち直りで一週間前の事など頭に無いらしく、何やら山盛りのパンフレットを漁っている。  部長はというと相変わらず不幸せそうに虚ろな目で斜め下を見つめている。俺に半殺しにされたのがよっぽどトラウマのようだ。  そして庄司。さっきから鬱陶しいのが奴だ。あからさまに心配げな表情で部長と俺の顔を交互にチラチラと伺っているのが横目でわかる。  俺はそれまで気づかないふりを装っていたが、あまりの視線のしつこさに本気で腹が立ってきた。 「庄司」 「はっはい何ですか!?」 「お前後でヤキな」 「ええ!?なっ何でですか!!」 「もう決まったから」 「ちょっちょっと待ってくださいよ!大体僕が何したっていうんですか!?それにこの前の花子さんのは、一弥さんが悪いんじゃないですか!!」  言ってから庄司は、ハッとして青ざめる。 「……誰が今、花子さんなんて言った?」 「ヒィ~ごめんなさいごめんなさい!!ちょっとまっ……」  拳を鳴らしながら立ち上がる俺。ズリズリと椅子ごと後退る庄司に近づいたその時―― 「温泉行きましょうってば!!」  空気読めない奴の空気読めない発言で全員が思わず西澤に注目した。  そして、 「……ハイ」  と、何故か肯いてしまったのだった。
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