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――三十分後。
「遅れてすんません」
我ながら誠意の欠片も感じられない声だと思いながらも、部室に入った。
すると妄想の世界へ旅立っていた部長が、ウーパールーパーのような表情で近づいてきた。
「全くこれだから若いモンは!君、今日で何回目の遅刻かわかってるのかね?去年から数えて九十九回目だよコレ!いい加減謝れば済むと思ったら大間違いだずぇ!!」
今日も部長の鬱陶しさは健在だな。
若いモンって歳一年しか変わんないだろうがお前。
と、心の中で存分に突っ込んでから俺は口を開く。
「残念ですけど今日で百回目ですよ部長。盛大に祝ってください」
「わ~めでたいめでた……ってんなわけあるかー!!このアホー!!」
一人ノリツッコミを始めた部長を無視して俺はいつもの席に着いてテーブルの上の漫画雑誌を開く。
「こんにちは一弥さん。今日も迷ったんですか?」
そう言いながら俺に茶を注いだ湯呑みを渡す眼鏡男。こいつの名前は庄司猶道(しょうじなおみち)――今もその役目を忠実にこなしている通り、古研部のお茶汲み(兼ツッコミ担当)係だ。
「ちげーよこの学校が広すぎるんだよ。……あれ、そういえば西澤は」 まだ来ないのか、と言いかけたその時、派手な足音が近づいてきた。
「……来たな」
「……来ましたね」
顔を見合わせる俺と庄司。
バン!
その直後にドアが物凄い勢いで開き、奴が現れた。
「伊万里先輩、花子さんに会いにいきませう!!」
「……は?」
ギィ……とぶつかった反動で跳ね返ったドアの陰から、五ミリくらいの厚さにプレスされた部長がはみ出てきた。
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