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ヒョウカ
「それでは事務所に戻りましょう」
そう言ってヒョウカさんが踵を返す。
すると長い黒髪が風に流されてふわっと広がり、シャンプーの良い香りが俺の鼻に届いた。
改めて思うけど彼女の行動の一つ一つには上品さが垣間見える。
流石は伝統ある舞踊一族、漲家の一人娘だ。俺達一般人とは育ちが違う。
キリト
「は、はい、ヒョウカさん」
そして俺はヒョウカさんの後に続いてビルの階段を駆け上がった。
ガチャ
キリト
「よう所長、決まったのか…って何やってんだ?」
ミロク
「あはは…」
所長は苦笑いしながら床を雑巾で拭いていた。
その横で困った様な表情の依頼人の女性と、ちり取りを持った落ち込んだ様子のナスカの姿があった。
キリト
「…どうしたんだ?」
俺はガルガリオンボックスを棚の上に置きながら、所長に疑問を投げかけた。
ミロク
「いえ、別にたいしたことではありません」
ナスカ
「う~…所長、スミマセン…」
ナスカがものすごく申し訳なさそうに謝る。
床に残る茶のにおいから、何があったか大体想像できるが…
…なんだこの、さっきの俺に対する態度との温度差は?
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