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「えっと……玲奈さん? どうかしたのでしょうか……?」
どす黒く、存在だけで辺り一帯を支配してしまいそうな程に、強烈なオーラを纏った玲奈に気付いた渓は、恐る恐る、爆発物でも扱うかのように声をかける。
「……渓……? わかるよね?」
明らかに怒っていますオーラ全開にもかかわらず、ハートマークでも付きそうな声音でそう言われた途端、ひぃっ、渓の隣にいる誰かから、悲鳴があがる。
それを聞いた渓は、冷や汗が滝のように流れるのを感じ、早くこの場を切り抜ければと、焦燥感を抱く。
さらに、わかるよね? と問われてもまったく身に覚えがないのだから、どうしようもないと思ってしまう渓である。
「あの……玲奈さん? わたくしめには、何がなんだかまったく身に覚えがないのですが……?」
「……そう」
短く答え、にっこりと、道端の花が咲くように、微笑みが玲奈の顔に浮かぶのと同時に、これで大丈夫だ、と渓が確信し、
「うん。そうそう、いきなり怒られても、わからな――」
渓が言い終わらないうちに、玲奈は短く助走をつけはじめた。
そして、渓の腹部へと命中させるべく跳び蹴りをみまってきたのだ。
そのために、渓は最後まで話す事ができずに、突然の攻撃をかわすために身構え、その攻撃を避けたのだ。
ごう、と凄まじい威力が秘められていたのだろう、と思わせる程の音を鳴り響かせ、玲奈の跳び蹴りは空をきる。
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