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「渓ー! 夫婦揃って迷うなよなー!」
人込みを掻き分け、頭一つ分高い身長の憎めないヤツが、赤い二人の元へやってくる。
その隣には、六条美野里。小首を傾げ、
「青春……?」
渓、玲奈の側までたどり着いた六条(佐伯も)は、顔を見合わせて意味もなく赤くなってる二人を見ての一言。
「そそそ、そんなんじゃないんだから!」
セリフをかむ、玲奈の発言。それが無ければ、まだ疑惑がかからずに済みそうなのに、あえての発言。美野里は、だからこそ、
「夫婦……?」
「そそそ、そんなのじゃ――」
「それは、どうでもええからよしとして」
玲奈が、あわてふためき、訂正するため熱弁を奮うかに見えたが、佐伯が遮る。この循環(サイクル)は確立されているらしく、傍観者に徹していた渓の頬を、苦笑いという形に歪めるのはたやすかった。
「で、佐伯。どうしたんだ?」
口をつぐみ、恨めしげな玲奈がいることは承知の上で、スルーすること、それすなち、渓の脳内では確定事項。
「いや、な。そろそろ昼飯やろ、って思ってな。どっか適当に食べに行かへんか?」
「ご飯……?」
「そうや、飯や。外に出て食べようと思うんやけ――」
「はいはーい!」
佐伯の話す語尾にあわせて、元気に発言を求める玲奈。手を挙げ、ぴょんぴょん跳びはねる姿は、高校生にみえない。
玲奈の言葉に応じる渓は、何故か尊大な態度で、
「玲奈に発言権を与えよう」
「私たち、あんまり学園祭見てないので、中で回りながら食べたいでーす!」
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