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「あれ? どこか行きたいとこでもあるのか?」
玲奈の、どこか行きたいところがあるかのような口ぶりに、ふと、疑問を持った渓が問い掛ける。
すると玲奈は何処かしらから『峡谷大学学園祭ガイド』なるものを取り出し、ある一点を指差し渓にわかるようにした。
「渓の嫁は一体どこからパンフレットだしてんや……?」
つぶやく佐伯駿真。
「異次元空間?」
答えるは、六条美野里。
しかし、二人はある事に気付く――玲奈が指差したところを見てから渓の動きが、一時停止していることに……
「渓、どない――」
「玲奈! ここは無い!」
愕然とした表情の渓を心配した佐伯が、声をかけようとすると、突然渓が叫びだした。
もちろん、突然叫びだした渓のいる四人組は、奇異な目で見られることとなる。
それでも、周りの目に渓が気付くことはない。
今は他人どころではない、といった必死さで玲奈ににじり寄る。
「ほら、一回くらい行ってみたいじゃない?」
「いやいやいやいや、ないないないない!」
手を振り、首振り全力否定。
「渓の嫁よ。お前は一体どこへ行きたいんや?」
放置しても、事態は改善の見込みが無いと判断し、佐伯は二人の間に割り込んだ。
「メイド喫茶!」
「…………。渓の嫁よ、お前は一体どこへ行きたいんや?」
「メイド……」
「一体何処へ行きた――」
「ストップ! ストップ!」
佐伯と玲奈で、不毛なやり取りが開始されそうになると、慌てて美野里が止めた。そして、
「それじゃあ、行きましょう」
ショートカットの黒髪を揺らしながら、問題発言。
「…………」
結果、黙りこくった渓と佐伯ができあがった。
「ね! 美野里だって行きたかったんだから!」
渓と佐伯は二人の顔を見て、ため息。
「さぁ。行くよ!」
鼻歌でもでそうな程に上機嫌な玲奈と、その隣に美野里。後方に、とぼとぼ歩く渓と佐伯。
四人は、目的地へと向かう――
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