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渓たちの目的地は、大学の中でも、特に奥まったところにあった。青空の下で、いくつかのテントがあり、そこから少し離れたところに、パラソルを中心として、椅子や机がおいてある。しかし遠くからは、客だけがその場には見当たらなかった。
そして、
「いらっしゃいませ、御主人様」
野太い声が渓ら四人を迎え入れる。
渓の視界に映る景色は、白と黒のモノトーンのいわゆるメイド服を着た“男”たちで埋まっていた。
これはなに、と死んだ目で渓は玲奈に目を向ける。が、その視線が噛み合うことはない。その間に、
「御主人様、どうぞこちらへ」
と、一つの席へと四人は案内される。
「コレは何?」
席まで案内されているとき、渓が玲奈に耳打ちをした。
「ひゃうッ! いきなり耳になんてしないで!」
「あ、ああ。それより……」
「知らないわよ!」
「そ、そうか……」
渓は、顔を赤く染め、噛み付いてきそうな勢いで話す玲奈に降参。
「佐伯は何か知って……ッ!」
渓が、玲奈から佐伯へと視線を移すと、そこには死んだ魚の目をした彼がいた。目は虚、肩をおとし、生気が抜けきって、干からびたミイラのようである。
「ああ、男や……」
そうぶつぶつ、つぶやきながら――
そんな佐伯を見てしまうと、声をかけるのが躊躇(ためら)われた。
佐伯の隣には、美野里がいる。しかし、彼女は微動だにしていなかった。これが当たり前といった表情である。
渓がそんなことをしてるうちに、案内された席へと着いてしまう。
そもそも、初めの光景に渓たち以外、他の客がいなかった時点でおかしいのだ。
「……すいません、一つだけ質問いいですか?」
席についた渓が、応対していたメイド服の男に尋ねる。
「何でしょうか? 御主人様」
ぞくッ、と渓の背に気味の悪い感覚が広がり、それに苦く笑いながら問い掛ける。
「コレ……なんのバツゲームですか?」
「…………聞くな……」
渓の質問に短く答えた男からは、諦めのオーラが滲み(にじみ)でていた――
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