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喧騒の中の高校二年生の教室。幾人もの生徒が立ち上がり、活動を再開させている。放課後といったところだろう。
だが、机上にぐったりとへばり付く、紺色のブレザーを身に纏う男子が一人、教壇の最も近くにいる。
つまり、教室の最前列中央の、自らの机に顔を伏せた男子生徒がいるのだ。
その男子生徒は、突っ伏している状態から、体格は平凡といったところ。
さらさらとした色素の抜けたような薄い髪が、特徴のように見える。それに、単調に上がり下がりする背中は、彼の呼吸を表しているようである。どうやら学校にて、睡眠をとっているようだ。
「ねぇ、渓(ケイ)もう終わったよー? 寝てないで、起きて。放課後だよ?」
彼の熟睡を妨げる女子生徒が一人現れた。
周囲の人間は、起こす者、眠る者に注意を払わぬところより、その光景は日常の一端なのだろうか。
妨害した者は、すらっとした手、今だ冬服の紺色のブレザーを彩る肢体、チェックのスカートからのびた綺麗な足、それぞれが全て充分な魅力をかねそろえている。
そして、ふわふわとした、肩を過ぎるかどうかの程の髪、鼻筋が通った顔に、ぱっちりとした目。二重のまぶたからすっとのびた睫毛は、自らの長さのためか、ふるふると震えているのだ。
完璧な少女、と言うよりほかないのだろう。
欠点とも言えるかもしれないものは、彼女にもある。
それはその身長である。
人形のような女の子の身長140センチ程なのだ。
そんな女の子が、先程、渓と呼ばれた男子生徒を鈴がなるかのような、可愛い声で起こそうとしているのだ。
だが、そんな大人しい音で男子生徒が覚醒するのならば、喧騒の中の教室において、眠りにつくことなど有り得ぬはずである。
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