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「痴話喧嘩なんかじゃ」
「はいはい。せやな」
玲奈の発言を遮った関西弁の男は、赤みを帯びた茶髪が印象的な男子生徒である。
「おはよう。佐伯(サエキ)。こっち来るなんてどうかした?」
渓が振り返り、男に話しかけた。
佐伯駿真(サエキ・シュンマ)は長身でがっしりとした体格である。軽く日にやけた体と、彼のもつ雰囲気がスポーツマンのような印象を相手に与えるのだ。
「よう、渓。明日、峡谷大学で学園祭やるやろ?」
「えっ。学園祭、明日だっけ?」
「そうよ。渓知らなかったの?」
「そっか。明日か…… 行くの面倒臭いな……」
「渓行かないの? 渓とまわるの楽しみにしてたのに……」
涙をうっすらと浮かべ、上目使いに渓を見上げる、玲奈。
いつの間にか、渓と話していた佐伯(サエキ)に変わり、玲奈が渓と話している。
「うっ。罪悪感が……と、なるとこなのだろうけど、玲奈、俺とお前は何年間の腐れ縁だ?」
「んー、初めから?」
「そうだ。もうかれこれ17年だ」
「幼なじみ、だもんね」
放課後の教室の中で、感慨深く話始めようとした二人。
「夫婦揃って昔話はやめろって」
「夫婦なんかじゃ」
「渓のことだから、忘れてるやろ、思うてな。まぁ明日拉致しにいくし、覚悟しとけや。んじゃ、俺、部活行くし」
再度、玲奈の言葉は遮られるのであった。
ふてくされた顔の玲奈ができ上がっているのは、言うまでもない。
「おう。じゃあな。玲奈、俺達は帰るぞ」
「うー、もう。行きましょう」
二人は、いつの間にか人数がちらほらとなっている教室を出ていった。
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