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「玲奈は明日、峡谷の学園祭に行くつもりだったのか?」
「当たり前じゃない。お祭りなのよ? ゴールデンウイークよ?」
「ああ。そうか」
二人揃って歩くは、帰り道。
まだ日が高いため明るく、二人が歩く通りには他にも歩く者が見受けられる。辺りを塀に囲まれ、家々が密集しているところより、住宅街なのだろう。
二人が通う常盤高校は渓、玲奈の自宅から近いため、歩いて登校しているのだ。
「明日、俺と佐伯についてくるのか?」
「えっ? そのつもりだけど?」
「ああ。そう」
そっけなく返事を返すなんて、まるで倦怠期の夫婦みてえ、一人の頬に苦笑がうかぶ。
それを目ざとく見つけた玲奈。その身長故に見上げる格好になってしまう。いつの間にか彼らの歩みは、完全に止まっていた。
「何笑ってるのよ?」
「ああ、いや、何にも」
「またやらしいこと考えてるのでしょう?」
「いやいや、何も考えてないって」
「絶対嘘だ。うー、もういいわ。早く帰りましょ」
渓の顔には、別の意味の苦笑が……
「いや、もう目の前だし」
右手を上げ指し示す。
「ほら、着いた」
「…………」
渓の指摘に固まってしまう玲奈。それもつかの間、素早く走り出す。
「じゃあまた、明日」
元気に言い捨て、駆けていく。ちらと見えるその顔は、ほんのり朱く染まっている。向かう先は二軒並んだ家の左側。
「おう。また明日」
渓はゆっくりと歩いてて右側の家。扉に手をかけ、
「ただいま」
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