第一章

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     ◆  暗く、赤く、時間が止まったように冷たい場所で、渓は赤黒い水滴を垂らしながら、玲奈を抱きしめている。玲奈は渓の胸元から、涙声で、 「渓……死んじゃやだよ……」 「えっ?」  眠りについていた渓は、跳び起きた。まだ外は暗く、朝には弱いはずなのだが、跳び起きると同時に、頭が覚醒する。パジャマは、汗でぐっしょりと濡れており、息遣いも荒い。  壁にかけられた質素な時計は、午前4時を少し回ったところを指している。 「はぁ、はぁ、はぁ……」  しばらくじっと落ち着くまでしていた。その間に掠れ、消えていく夢の話。忘却の彼方へと…… 「俺、何の夢を……玲奈に、何か言われたのか?」  誰にともなく問い掛ける。答える声はない。 「今、4時か。汗が気持ち悪いし、シャワーでも浴びようかな」  独り言は暗がりの中へと吸収され、座り込んでいたベットから立ち上がる。  独り言に答える者はいない。だが、窓からの一つの視線が、渓へと突き刺さっていた。  それに渓が気付くことはない……
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