3人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
◆
暗く、赤く、時間が止まったように冷たい場所で、渓は赤黒い水滴を垂らしながら、玲奈を抱きしめている。玲奈は渓の胸元から、涙声で、
「渓……死んじゃやだよ……」
「えっ?」
眠りについていた渓は、跳び起きた。まだ外は暗く、朝には弱いはずなのだが、跳び起きると同時に、頭が覚醒する。パジャマは、汗でぐっしょりと濡れており、息遣いも荒い。
壁にかけられた質素な時計は、午前4時を少し回ったところを指している。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
しばらくじっと落ち着くまでしていた。その間に掠れ、消えていく夢の話。忘却の彼方へと……
「俺、何の夢を……玲奈に、何か言われたのか?」
誰にともなく問い掛ける。答える声はない。
「今、4時か。汗が気持ち悪いし、シャワーでも浴びようかな」
独り言は暗がりの中へと吸収され、座り込んでいたベットから立ち上がる。
独り言に答える者はいない。だが、窓からの一つの視線が、渓へと突き刺さっていた。
それに渓が気付くことはない……
最初のコメントを投稿しよう!