125人が本棚に入れています
本棚に追加
時刻にして午前二時。よい子はもう寝ている筈の時間で、人影も点々としている。最も、こんな時間にうろついている人間は飲み会帰りのサラリーマンや、夜遊びに耽る悪ガキ、特別な事情を持つ者などに限られてくるだろう。
フラフラと覚束ない足取りで歩く中年の男もまた、飲み会帰りで終電を逃しこうして徒歩で歩いているのだった。
路地裏へと続く道が多いこの通りは、昼間ならば人で賑わい混み合うのだが今の時間では人の存在の方がおかしい。
不意に建物の影から何かが出てきた気がした。酔って思考がハッキリしないのか、それが野良犬の類なのかあるいは自分と同じような人物なのか曖昧だったが、酒が回っている頭は数秒で思考を放棄。またフラフラと歩き始めた。
近づくにつれて、影がハッキリとしたものになっていた。若い、女だ。まだ学生だろう。そんな雰囲気がある、と男は考えていた。
女子高生が深夜にうろついている。家出か、夜遊びか、あるいは違う何かか。
ぼんやりとした頭は直ぐに適当な結論を生み出して、男に安易な行動を取らせてしまった。
「きみぃ、こんな時間にそとに出たら危ないぞぉ?」
社内でも責任感が強いと評判の彼は、その人柄通り女の身を案じ声をかけるのだが……傍から見れば絡んでいるようにしか見えない。
最初のコメントを投稿しよう!