第壱話 白き少女 ─神秘(mystery)─

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 この年、突然何処だか分からない星が地球に攻撃をしかけてきて、宇宙戦争が始まった。  31世紀の地球。かなり宇宙への進出も果たしていたが、未だ地球が見つけることのできていない星である。  そんな最中セイドは、驚く程綺麗な娘を見た。  とても妙な所の多い娘。──たくさんの惨殺死体の中で一人で立たずんており、全身に血を……、返り血の様な物を浴びている。年齢はそうセイドと変わらない。透き通る様な白い肌。綺麗な銀青色の髪。印象的な赤い瞳。見る者の目を奪う美しい容姿──。  とても妙な娘。だけどセイドにはそんなこと関係なかった。彼女に目を奪われた。見目の美しさだけではない。  彼女の何かが、全てが、セイドの目と心を釘付けた。  その後、父親は戦争に兵士として借り出され戦死。母親はセイドをかばい逃げ遅れ焼死。セイドは親戚の家をたらい回しにされた。  そして17になった時、兵士の招集礼状がセイドの元へ来た。  戦争になんて手を染めたくなかった。だけど、親戚の家をたらい回しにされる生活は地獄だった。何より招集礼状は、絶対だった。  兵士にならざるを得なかった。  ──西暦3032年、現在。セイクレッド=リーンカルス、19才。 「おーい、セイド!」  一人の男がセイドを後ろから呼び掛けた。声に気付いたセイドは振り返りつつ言う。 「あぁ、リラ。何?」 「『リラ』じゃねぇ!! 女みたいな名前で呼ぶなっ! 『ライアン』か本名で呼べよ!」 「『リラ』って可愛いじゃん」  セイドを呼び掛けたのは、『リラ』こと『ライアン』こと『リライアンス=カーライド』。セイドと同じ年の19才。緑色の瞳に、腰まである長い茶色の髪を一つにまとめている。彼の本来のニックネームはライアンである。が、セイドは女性を思わせる程の長い髪を持つリラへの冗談でリラと呼んでいた。 「ところで何?」  ニックネームのことでモメた後、ようやく本題に入った。セイドの問いにリラが答える。 「あぁ。隊長がお呼び」 「なんで」 「明日の攻撃、セイドに操縦してくれってさ」 「やだよ」 「自分で言ってこいよ」
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