プロローグ

2/2
6791人が本棚に入れています
本棚に追加
/280ページ
    緊迫した空気が流れ続ける某グループの会議室。     「……では、次期社長は秋弥様で宜しいだろうか?」     伝統ある我が社では総帥は直系をと昔からの式たりとなっている。     「しかし、秋弥様が現在一任されている子社の株価は余り芳しく無い状況ですね」     「今は我が社にとっての一大事です。言っては何だが、秋弥様の手腕では持ち直す事も難しいのでは?」     「やはり、あの方が最有力候補なのですがね………」     「ですが、あの方は会長自らが絶縁された身。会長のお許しが無い限り、勝手は出来ないでしょう」     「ならば、遥弥様は?」     「御本人が望んで居られないので。自分より相応しい方はあの方だと」     ですが……と言葉を濁す。これでは行ったり来たりだ。     「ふぅ、では最終的に次期社長は秋弥様という事で………     ガチャ………     最終決定が下されて皆が肩の力を抜こうとした時、会議室の扉が静かに開かれた。     「その決定…待ってはくれないか?儂から推薦したい者が居るのだ」     一人平然と立ち、威厳という貫禄で周りの者たちを凍り付かせる。     「か、会長?!貴方様が何故ここに?」     「そんな事より!会長の推薦される方とは……」     誰なんだ?会長が自ら推薦されるのだから……いや、まさか……と口々に囁かれる。     「引退した身で口出しするのは心苦しいのだがな。皆、楽にしてくれ」     緊張で強ばっている役員たちへ笑いかける。     その一言で自分たちが体に力を入れていた事に気づかされ、おずおずと体勢を元に戻す。     「儂はな……あの子に儂の後を継いで欲しいと今も昔も思っているのだよ」     彼らはその一言でこの後、口にされるであろう名前が容易に想像がついた。     「皆も分かっておるだろう?今の状態を打破出来るのは儂を除いてあの子だけだと言う事を」     そして最後の一言で確信が持てた。あの方がお戻りになられるのだと。      
/280ページ

最初のコメントを投稿しよう!