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春……出会いと別れの季節
聖国ヴェリアスの首都ヴェシウスにあるガルガナム王立魔術高等学校では今、始業式を向かえていた
生徒達は校舎の横にある講堂で教頭の長い…長い話と言う何処の学校でもある苦行と戦っていた
そんな教頭vs生徒の激戦(?)の最中、すでに戦意喪失…あるいは端から戦闘放棄している者達がちらほらと…
今年で二年になる男子生徒…リン・グラーフェンも今まさに教頭の魔声の餌食になろうとしていた
眼を遮るか遮らないかの長さに伸ばした黒髪をユラユラと揺らし、髪と同色の黒い瞳は魔声に耐えるように半眼で虚空を睨み付けている
…早く…早く終わって
もはやグロッキーなリンと未だ戦い続ける生徒達の思考がシンクロする中、教頭の魔声は講堂に鳴り響いていた
…………
講堂の前は先ほど終了した苦行…もとい始業式から解放された生徒達で溢れかえり、鬱憤を晴らすように騒いでいた
例に漏れずリンもその中に……そして張り出されているクラス分けの紙を見ている
「…A組……B組……あった!……げっ…」
「リンちゃんおかえり……また同じクラスだね」
生徒で溢れかえった講堂前を抜け出したリンに背が高く細身で茶髪の好青年…マリウス・ウェルト・シラーが爽やかな笑顔を見せた
「ちゃん付けすんな……はぁ…またお前とかよ」
「嬉しそうだねリンちゃん…そんなに僕と一緒が良かった?」
その言葉に返すのも億劫となったリンはマリウスを無視して校舎へと向かっていく
「……素直じゃないなぁ、リンちゃんは」
笑みをさらに深めてマリウスはトボトボと歩むリンを追っていった
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