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くらりと目眩が起きる。
タカシは……タカシは無事なの……?
よく見ると足下は死体で埋め尽くされていた。
どれもが引っ掻かれたように生々しい傷が残されている。
込み上げる吐き気を堪えて、慎重に進んでいく。
赤い赤い景色の中、タカシはいた。
「タカシ!!」
アヤコが叫ぶと、タカシはゆっくり振り向いた。
「……ひっ」
どうにか、アヤコは悲鳴を飲み込む。
タカシの顔は血で真っ赤だった。
涙と共に赤い液体が頬から垂れている。
「ぼ……僕がやったんだ……!!」
あと数メートルというところで、タカシは泣きながら叫んだ。
「僕が殺したんだ!!」
タカシの爪は……いや、腕まで真っ黒になっていた。
あれは血肉だ。
死体の引っ掻き傷はタカシがつけた……?
「その通りです」
いつ現れたのか。
赤黒いタカシと対照的な純白の白衣に身を包んだ男性が、死体の上に立っていた。
「桐宗タカシ、彼がこの殺人を犯したのです」
機械的に、彼は言った。
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