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「……は、何、言って…」
「桐宗タカシの発症はつい5時間前です。末期ですね、残念です」
発症?
末期?
この人は何を言っているの?
「いつ発症してもおかしくはありませんでした。よく持った方でしょう」
アヤコが放心していると、白衣をまとった医者らしき人物はタカシに近づいた。
「13年前から、これは決まっていたことのです」
自然な動作で黒い何かを取り出す。
――拳銃……っ?
「やめなさいっ、タカシを殺す気なの!?」
「はい」
白衣の医者はそのまま拳銃を構えた。
「おもちゃ、なんでしょ?何言って……」
「――発症者は罪人。抹殺のみが判決」
彼は事務的に呟いた。
パ ァ ンッ
乾いた音が鳴ると同時にタカシの膝が崩れた。
「タカシぃ!!!」
死体など気にせず、アヤコは弟へ駆け出した。
ぐにゅぐにゅ、と生々しい感覚が足に伝わる。
アヤコがタカシに触れると血を吐きながら絞り出すように呟く。
「オレはこいつらに殺されるために生きていたのかよ……っ」
ごふ、と血を吐いて、タカシは動かなくなった。
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