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「……は?タカシ?タカシ!!」
医者はゆるりと拳銃を収めて立ち去ろうとした。
「待ちなさいよ!!この、人殺し!!」
「それは桐宗タカシですよ。私は判決を下しただけですから」
「判決?殺すことが?13年前から決まってたですって?……なら元凶はあなたじゃない!!」
くるり、と医者が振り向いた。
悪寒がするほど、冷たい、瞳。
「桐宗タカシに罪はないと」
「ないわ!!」
医者を睨んだままアヤコは叫んだ。
「見逃そうと思ったのですが、残念です」
「なによ、私も殺す気?」
「罪人の味方もまた罪人ですから」
……死なない。
私は、死ねない。
アヤコはキッと医者を見据えた。
「タカシの仇を討つまで、私は死なないわ!!」
「そうで……!?」
拳銃を取り出そうとした医者が、不自然に固まった。
「逃げろ!!」
誰かの声で、アヤコはハッとした。
逃げなきゃ……!!
医者はまだ固まったまま、
「くそっ、何故動かない!!」
など悪態をついている。
アヤコはゆっくり立ち上がって、一目散に駆け出した。
「待て!!」
後ろは、振り返らなかった。
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