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カリカリ……
カツッ…カッカッ……
鉛筆が紙を擦る音、黒板を白いチョークが走る音が部屋の中に響き渡る
良くある教室の風景の中で窓際に座る薄く青みがかった髪を肩より少し長めに伸ばした少女-エイナ・エルビナンス-はそんな風景に混ざらず無表情にただ窓の外の一点を見続けていた
その視線の先にいる蒼い髪の青年、昨日エイナが召喚し契約した使い魔が、今いる校舎と講堂を繋ぐ連絡通路に設けられたベンチで、鳥達に囲まれながら横になって眠っていた
教室からは、彼がどんな顔をして眠っているかはわからない
魔力で眼を強化すれば見えるだろうが今は授業中だし、第一そこまでする意味も無い
…なのに、エイナは彼のことが気になってしかたがなかった
何故かはわからない
何度も視線を反らすのだが、いつの間にかまた彼を見つめている自分に、エイナは不思議でならなかった
「…エ…ビ……ス…、…ルビ…ンス…、……エルビナンス!!」
突然自分を呼ぶ大きな声にビクッと身体を一瞬震わせ、声をした方…黒板の前に立つ魔術歴史学担当の男性教諭に顔を向けた
「……どうしたエルビナンス…ぼうっとするなんてらしくもない……どこか具合でも悪いのか?」
そういった男性教諭は少し老けたその顔に怒り半分、心配半分といった表情を浮かべエイナを見ていた
「いえ…何でもありません……すいませんでした…」
エイナはそんな男性教諭に少し頭を下げてから授業を進めるよう促した
その後、男性教諭からの注意の言葉を受け流しながらエイナは昨日の出来事を思い返していた
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