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そんな人生を左右しかねない重要な行事に挑む十三回生(高校二年)の中に一人の少女がいた
エイナ・エルビナンス
ヤカムディア内の領地の一つを司る上流貴族エルビナンス家の長女である彼女は常に無表情である
しかし、その無表情の中に確かな緊張感を彼女は感じとっていた
名家エルビナンス家という重圧と次期当主としての責務、失敗したらと思う不安とその後に待つ恐怖
17歳という若さにエルビナンスという名は余りにも重すぎた
今にも潰されてしまいそうな緊張感に知らず知らずエイナの身体の至る所から嫌な汗が吹き出る
周りに気付かれないように掌の汗をいくら拭ってもまた吹き出る
彼女に、励ましの言葉を掛ける者はいない
エルビナンス家なのだから出来て当たり前、出来ない方がおかしい…と
ただ一人の親友だけは励ましてくれたが、今のエイナには対して役には立たないだろう
《…兄様なら……兄様なら、こんな状態な私にでも勇気をくれるかも…》
そう思った時、自分が何のために今ここにいるのかをエイナは思い出した
《……兄様に頼っちゃだめ……私は……》
そして少女は、決意を新たにする
《私は兄様に償うためにここにいるんだから》
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