プロローグ

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 だけど同時に、とても寂しかった。  みんなはこんな世界を知っている。だけど私は世界を知らない。  だから私は話を聞くことはできても、私から話すことはできない。  だから、羨ましかった。  だから、飛び出したかった。  だけど、それは怖い。  少し前の話である。一人の子供がこの部屋から出て行ったことがあった。  壁の向こうからいつも食事を与えていた男の怒号が聞こえたかと思うと、突然大きな音が聞こえた。  痛い、痛いよ。  そんな声が、どこかから聞こえた気がした。  多くの子供達が怯えていた。少女自身も、怖くなった。
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