プロローグ

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 ほら、また少し近付いてきた。そう言っている間にもほら、また少し。  建物を出て、路地を駆け抜けている間に息が上がってきた。  わけもなかった。ろくに運動をしない。食事も一日一回しか摂らない。体力がつくはずもない。  殺される。  それは嫌。 「嫌、嫌。いやだ」  死にたくない。  だから。 「うわああああああああああああ!」  殺す。  だから武器を取った。少女に不釣り合いな大きな武器を。  たまたま引いたトリガーが、武器を起こす。  爆音、爆音、爆音。  機関部に連なる鋭いチェーンが高速で回転する。本来ならば人を切るものではない武器。  だけど大きすぎた。  ろくに体力が残ってない体では持ち上げることが精一杯。振ることなんて叶わない。  でも充分。そのまま飛び込めばそれで充分だから。
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