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あれから十数年も経過すれば小さな少女も成長する。当然の、摂理だ。
「ふぁ……っ」
エレベーターの中で荒崎摩耶(あらさきまや)は欠伸をかみ殺していた。このところろくに睡眠がとれてない。
愚痴を言っても仕方がないが、やっぱり言いたい。
「來(らい)、いい加減食堂に呼ぶのはやめろ」
壁にもたれかかりながら、隣に立っている男に愚痴る。
「お前な。家族で飯食うっつー事に何か文句でもあるのかよ」
「そもそもだ、私はこれでも賞金首を追ってる最中だったんだぞ? 張り込みでろくに眠れていないというのに急に呼び出すな」
「知るか。どうせ張り込んでる手前ろくに飯食ってないんだろ?」
そこでエレベーターが止まり、二人は通路へ出る。
そこは地下世界中層部にそびえる二つのビルの一つだった。三つの階層に区切られた中でも最も広いこの中層部において、シンボルとも言うべき二つの塔。
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