一枚の写真

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本城は美知流の前に資料を広げた。 「こっちはさっき美知流が言った『壷を受け止めた』ときについた指紋だ。拭いたような跡があったんだけど、かすかに残ってた。それともう一つ、この指紋だ。もう一度触ったよな?今度はしっかりついてる。それに、帰ったはずの美知流が裏の駐車場から入っていくのを、警備員が見てるんだ。」 美知流は視線を泳がせながら、答えを探していた。 「本当は何か知ってるんだろ?本城さんに話してみな。」 「……ウチ、玲子さんのこと結構好きやったんですよ。あの人が観光で大阪来たときに兄ちゃんがナンパして、意気投合したみたいで玲子さんが東京帰った後もやり取りしてて。ナンパで知り合った二人がそんなに続くなんて思ってなかったけど、遠距離恋愛でもラブラブでついには結婚でしょ?ウチが東京に出てきた時もめっちゃ良くしてくれて、ホンマのお姉ちゃんみたいやったんです。結婚式楽しみにしてたのに…それやのに、こんな…。」 美知流が涙ぐみながら話しているとキッチンから鍋が噴く音がし、美知流は慌ててキッチンへと立った。 「本城さん、お皿出してもらっていいですか?ご飯出来たんで食べましょう♪」 「ん?あぁ。」 美知流に話をはぐらかされた感じであったが、本城はそれ以上問いつめることはせず、しばらく美知流に付き合うことにした。 「お♪旨そうだなぁ♪いただきます。」 本城は美味しそうに料理を食べ始めた。 「どうですか?」 「旨いよ~。美知流、料理上手いんだなあ。久しぶりに家庭の味を味わった気分だ。」 「それはよかった♪ウチもこうやって誰かと食べるん久しぶり♪」 「久しぶりって?」 「あれ?知りませんでした?ウチ、一人暮らしなんですよ?まだまだ調べが足りませんなぁ、刑事さん。」 美知流はそう言って意地悪い笑みを浮かべた。 「これは美知流に一本とられたな。」 本城と美知流は和気あいあいと食事を楽しみ、片付けを済ますと一息ついた。 「ねぇ、本城さん。」 ふいに美知流が本城を呼んだ。 「ん~?」 「今日、お泊まりしていい?」 「お泊まりって…ここにか?」 美知流の突然の話に驚く本城。 「ウン…。お願い!泊めてくれたら明日全部話すから。約束します。今日は…一人でいたくないねん。ね、お願い。本城さん。」
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