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「なぜ裏から入ったんです?」
「それはたまたま、戻るのに裏口の方が近かったから。警備員さんに声かけようと思ったんだけど、車を誘導したりして忙しそうだったんでそのまま入って。それから、応接室に行ったら玲子さんが倒れてて……あ、違う。応接室に行ったら中で話し声が聞こえたんだ。それで先にトイレに寄って…それからまた応接室に行ったんですよ。そしたら…。」
「そしたら、彼女が倒れてた…か?」
美知流は本城の言葉に黙って頷いた。そして、カバンから手帳を取り出すとテーブルに置き立ち上がるとドアの方へ行った。
「部屋に入ったら手帳が置いてあるのが見えたから、こう来て手帳を取って…。」
美知流は説明しながらその時と同じ動きをして見せた。
「カバンに入れようとこう向いたら足が見えて、変に思って寄ってみたら玲子さんがこんな感じで倒れてて、壷がこうやって…」
「美知流、ストップ。」
本城は美知流の説明を中断させると、ミノルの方を向いた。
「ミノル、そこに寝っ転がりな。」
「は?」
ミノルはきょとんとした顔で本城を見る。
「いいから早くしろっ!」
「は、はいっ。」
ミノルは慌てて、寝っ転がった。
「これでいいですか?」
「ちゃいます。玲子さんはうつ伏せでした。」
「あ、はい。」
美知流に指摘され、ミノルはうつ伏せに向き直った。
「壷がないから、これ使っておこう。美知流?」
本城はソファにあったクッションを取ると美知流にパスし、クッションを受け取った美知流は、壷があった辺りにそれを置いた。
「じゃあ始めてくれ。」
「はい。手帳をカバンに入れようとこう向いたら足が見えて、変に思って寄ってみたら玲子さんが倒れてて、血の付いた壷がこの辺に転がってました。それで、壷をちょっと押してどかして玲子さんに声かけたり、揺すってみたりしたんですけど反応なくて…。脈はよくわからないから、仰向けにして胸に耳を当てたら…心臓の音がしませんでした。」
美知流が説明しながらミノルを仰向けにし、胸に耳を当てるとミノルが顔を赤くした。
「ミノル、どうした?顔が赤いぞ?」
本城が悪戯っぽく言うと、ミノルはますます顔を赤くし「なんでもありませんよ!」
と言った。
「ミノルさん、心臓の音めっちゃ速くなってますよ?」
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